高田製材所の三代目社長であり、木材アドバイザーとして活躍する高田豊彦さんが世界中で目利きして集めてきた250種類の木材がずらり。福岡県大川市にある高田製材所には、「こだわりの木材で家具や家を作りたい!」と切望する人々が全国から集まり、木材との出会いを楽しんでいます。WSIと高田さんは、これまで複数のオフィス作りでタッグを組み、オフィス空間の中で生き生きとした存在感を放つ一枚板のテーブルを納品してきました。高田さんは日々どのように木と向き合っておられるのか。木の魅力とはどのようなもので、それがオフィス空間に置かれた時に、「働き方」はどう影響を受けるのか。高田社長とWSIの越田が対談を行いました。
(プロフィール)
高田 豊彦
有限会社高田製材所社長(三代目)。幼少期から自宅横の工場や資材置場で遊び、小学生の頃には父の跡を継ぐことを決意していた。現在は世界最多とも言われる250種類の木材を工場に備え、豊富な経験と技術を駆使しながら、世界にふたつとない「この木」の個性を活かす製材を行っている。
越田 壮一郎
株主会社ワークプレイスソリューションズ(以下WSI)代表取締役。働き方に関するコンサルティングや世界各国の優れたオフィスコンセプト・プロダクトの提供を通じて、多様性が尊重され、個々の可能性を引き出し合える空間のあり方を追求している。

“適材適所”を極める。
高田様:
私の生業は「木を活かす」ことです。木の種類や部位によって、“適材適所”と言いましょうか、適切な方法で使っていただくようご提供しています。木というのは人間と一緒です。日本人とアメリカ人がいるように、木にもスギやヒノキがある。さらには日本人の中でも性格が一人ひとり全く違います。私はそうした木の個性を一つずつ吟味し、お客さんにご提供するのが仕事になります。例えば「曲がっている」ことは木の欠点のように捉えられますが、実は曲がっている方が強度があり、古民家の梁にちょうどいい。無理にカットしたらせっかくの特性が損なわれます。曲がった木は、「曲がっていた方がいい用途」に使っていく、ということですね。

越田:
木の性質と、それに適した用途、どちらも頭の中に入れておかないといけないので大変なお仕事だと思います。個性の吟味とおっしゃいましたが、高田さんはどのように一本一本の個性を見極めておられるのでしょうか?そもそも買い付けにはどのような場所まで行かれているのですか。
高田様:
森から伐採されて原木置き場まで運ばれてきた状態を見にいくことが多いです。あるいは市場に行って競りに参加することもあります。その際にどこを見極めるかと言うと、木の表面全部。丸太の外側、皮の部分、カットされた切り口の年輪、全部見ます。見ながら、どういう日当たりの場所でどんなスピードで育ったか、北側か南側か、斜面に生えていたかなどの生育歴を読み解いていきます。例えば日当たりのいい場所で急速に育った木は、枝葉を増やして盛んに光合成をしてきたため、節が多く、質もあまり良くない。逆に日当たりの悪い場所だとゆっくりゆっくり育ち、年輪も緻密になる。屋久杉がいい例ですね、100年で10センチしか育たないからこそしっかりした木になります。ただ、中には木の節が好きな人もいますので、一概に欠点とは言えません。よって、節があるからといって一律に排除せず、「何に使えるか」「どなたが買ってくれるか」という売り先を思い浮かべながら買い付けをしています。過去に一度でも「◯◯という木はありますか?」と問い合わせを受けたものは、全て揃えてやろうという気概でいたら、今は常時250種類の木をストックしておくようになりました。

越田:
国内外の木材をここまで豊富に揃えている製材所はあまり聞いたことがありません。高田製材所に行けば実物との出会いがあり、目で見ながら選べるのはお客さんにとっても魅力です。それに、高田さんがそれぞれの木の生育歴や、誰にどんなふうに伐採されてどう運ばれてきたかという「この木の物語」をお話ししてくださると、私たちも大変惹きつけられます。WSIのお客様を高田製材所までお連れすると、皆、高田さんのお話に聞き入って、木という材料に魅了されて帰っていかれますよね。

一枚板の生命力を、オフィス空間に。
越田:
WSIのオフィスには、高田さんから立派な一枚板のカウンターを入れていただいています。そこで飲み会をするとあまりの心地よさに社員が帰りたがらないんです(笑)。「自宅に欲しい」と言う人もいます。一枚板というものには、デザインを超えた「木の魅力」を強く感じます。
高田様:
一枚板は木の物語や生命力を最も感じやすいかもしれませんね。自然に触れている感じがしますし、「木材になって、なおも生きている」と私は思います。

越田:
以前デンソーさんのオフィスリニューアルを行った際に、長さ4mものクスノキの一枚板のテーブルを入れましたよね。あれも新しい東京オフィスにデンソーを象徴するようなシンボリックなものを置きたいという思いから、皆で議論をする中で、クスノキがデンソー本社のある愛知県刈谷市の“市木”であることに着目して、そこにさらに「東京という地で大きく育ってほしい」という願いを重ねて。高田さんにはそうした思いにぴったりの木材を目利きしていただきました。あのテーブルは今、デンソー新虎オフィスの象徴的な存在として、皆が集うエリアに置かれています。これがもう、大変ご好評で!
高田様:
私も実際にオフィスに設置されたお写真を拝見しましたが、空間にとてもうまく調和していましたし、最初に木を見た時に思い描いたイメージ通りでもありました。きっとあの周りで社員様がコーヒーを飲んで癒されて、「また頑張ろう」と各々のデスクに戻るような光景が生まれているんだろうと想像します。僕としても、思わず手で触りたくなるテーブルだったというか、誰もいなかったら頬擦りしたり寝転がったりしたいと思ったかもしれない(笑)。少なくとも、あの木の周りでは悪いことを言えない、負の感情を出せないような気がしますね。

越田:
これまでのオフィスには、集うこと、そしてそこでコミュニケーションやコラボレーションを起こすことが求められていました。しかし今は「人の個性をどのように引き出すか」という観点が大事になってきていると思います。個性を出すには「素になれる」「心地よくいられる」「リラックスできる」環境が必要で、在宅勤務なら簡単に叶うそれをオフィス空間でいかに生み出せるかが課題です。その点、一枚板の周りって、大勢でも集まれるし、逆に一人にもなれるんです。そしてもちろん木の手触りや香りで癒されたり、ホッとしたり。デンソーさんもすっかり一枚板に魅了されているようです。
高田様:
私自身は製材屋の息子に生まれ、木があるのが当たり前の環境で育ってきましたが、大人になってふと木の持つ力に気づくことがあります。前日に嫌なことがあってムシャクシャしていても、翌朝製材所で原木の香りに包まれていると「まぁええか。今日も一日頑張ろう」と思えてくる。デンソーさんの事例含め、こうやって自然に心を解きほぐして前向きにしてくれるのは、人間の力では成し得ない。木の力ですね。

創造性は、偶然の出会いから。
越田:
高田さんにとって、これまで特に印象深かったお仕事やご依頼はありますか?
高田様:
三つあります。一つは約20年前、とある百貨店の飲食店フロア一帯の家具、床、壁、天井、テラス、オブジェ、器とほぼ全てに特注で木材を使っていただいたお仕事。オーナー様の「こういう丸太を仕入れてほしい」から始まり、探して仕入れ、乾燥に1、2年かけ、いよいよそれぞれの目的のために使っていくという気の長い仕事で……今だとコストがかかりすぎて絶対にできません(笑)。二つ目はコロナ禍に、クラブのママさんがご自身のお店の改装の相談でご来店された時のこと。事前に施工業者さんから「予算はここまで」と言われていたので、それに合うものをお出ししましたが、「うーん、他にないの?」とおっしゃる。それで「値段が倍しますが、こういう木もありまして」とお見せしたら「これがいい。私はこれで働きたい」と即決されたんです。

越田:
一期一会でビビッと来たんですね。
高田様:
きっと「私はこれを店に置いたらめちゃくちゃやる気が出る」と思われたんでしょう。実際、コロナ禍を無事に乗り越え、今も頑張って経営されています。最後の三つ目は、15年前、私の自宅を「自社の売れ残りの材」で建てたこと。売れ残りですから、割れ、節など、基本的に欠点があってお客さんに敬遠される材ばかりです。でも結果として80種類くらいの木を使ったかな。一つ一つ特徴や色を加味して、建築家の先生と話し合って、うまくデザインしてもらいました。
越田:
私も見に行かせていただいたことがありますが、ものすごくかっこいいお家ですよね。元々は使えなかった木材が、役割にはまるとあんなにも輝くのかと。

高田様:
ありがとうございます。その先生がよくおっしゃっていたのが、「最近の若い建築家は現場に全然足を運ばない。部材がある場所に赴かず、カタログだけ見てそこから選んで、わかったふりをしている」と。現場で偶然出会った木材をどう活かすかや、私の家みたいに売れ残った材をいかに設計に組み込むかを考えることからオリジナリティが生まれる。カタログという、皆が同じものを見ている中から選んでいても差別化にならないとおっしゃっていました。
越田:
非常によくわかります。だからこそ僕はことあるごとにお客様に現地まで来てもらい、実物を見ていただいているんです。現地に来ると、それまで一言も発しなかった方が「脚はこの色がいい」なんて言い出すんです!現物を見ると皆想像を膨らませて考えを始める……すごいことだなと思います。
高田様:
実物の力は強いですよね。ぜひこれからもどんどん連れてきてください。

材料を活かすことから、人の個性を活かしていく。
高田様:
昔は今に比べてもっと木が身近だったと思うんですよ。食器でもなんでも、生活で触れるものの大半は木でできていたはずですし。それが工業製品に置き換わり、プラスチックになり、「木は使いづらい」「木は高い」と縁遠くなっていったわけですが、今またAIの時代になって、木の良さが見直されているように感じます。
越田:
オフィス業界にいる立場としても同感です。実は今までWSIが受けてきたご要望のほとんどが「オフィスで生産性を上げてほしい」というものでした。言い換えれば、「どうすればプロジェクトメンバーのチームワークが高まるのか」「どうすればコミュニケーションが活性化され、仕事の成果を最大化できるのか」を徹底的に考え抜いたオフィスを作ってほしい、というご要望です。一方で最近は、期日のある中で成果を求められる“プロジェクト”だけではなく、継続していく“コミュニティ”から価値を生み出そうとしたり、偶然の出会いや予期せぬつながりを大切にしたりと、価値観が少しずつ変わってきているように感じます。それはAIが出てきて仕事の多くをAIに任せられるようになる中で、「人間は本質的に何をすべきなのか」を問い直すことで生じているのではないかと。こうした価値観の潮目にあって、私たちは、あの一枚板のテーブルのような存在をより大切にしたいんです。さまざまな人が「木」の周りに集まってきて、心の壁をほどき、それぞれの人らしさが立ち上がっていくあの光景をオフィスにもっと生み出していければなと、そんな気持ちでいます。

高田様:
私ももっと現代人の身近に木が増えるお手伝いをしたいと思っていますし、木の需要が増えることで森が豊かになればなおのこと嬉しい。WSIさんとご縁ができたことで、「都会のオフィス」という今までになかった場所と接点が生まれました。オフィスに木が求められるのなら、木の活かし方を考えながらご協力していきたいと思っています。
越田:
ぜひよろしくお願いします。人間は五感を持つ生き物ですので、オフィス空間でも匂いや触り心地、生きているものの存在から影響を受けていると思うんです。だからこそ、デザインやレイアウトという視覚面だけでなく、木や布などの素材が人の心にどう影響を与えるかも考えられたオフィス作りができたらと考えています。これからも高田さんのような「材料のプロ」にいろんな教えを請えれば嬉しいです。そしていつか高田さんの、“それぞれの木の個性が輝いた”素晴らしいご自宅のような、そこに集う人々の個性が引き出され、存分に活かされているオフィス空間を共に作れたら本望です。